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そりゃないでしょ!「EV化の以前に発電所を脱炭素化できるかが日本の死活問題になる」日本自動車工業会豊田章男会長発言

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photo by ei-miさん https://www.photo-ac.com/profile/864202

 

最近、ガソリン(ディーゼル)車の全面EV化の話題がツイッターなどでも

盛り上がっていますが、まずその背景をざっとまとめてみます。

 

・海面上昇や異常気象などCO2排出問題の緊急性が高まっている

・米バイデン政権もパリ協定に復帰

・テスラなどEV車の販売台数が急増

・多くのEV関連企業まで株価が上昇、世界中の期待感が高まる

アメリカ、中国、イギリスがEV化への期限目標を次々と発表

・日本政府も計画を発表=2050年に脱炭素社会を実現

 ガソリン車を2030年代に全面電動化(ハイブリッドと燃料電池含む)

日本自動車工業会が報道関係者とオンライン懇談会

 

日本自動車工業会豊田章男会長といえば、世界に誇る大企業、

トヨタ自動車のCEOでもあります。

私も仕事やその他でトヨタの車にいろいろ乗ったことがありますが、

どれも乗り心地、快適性、運転のし易さ、何より品質感が抜群ですよね。

海外ではハイエースランドクルーザーが、故障の少なさ

メンテナンス性の高さからプレミアム価格で取引されるほどです。

 

報道陣との懇談会で豊田会長は以下の①~⑧について、熱く訴えました。

 

①日本の自動車メーカーはこれまでもハイブリッド車の量産などによって

 燃費を大幅に向上し、生産工程でも消費する電力量の低減など

 環境問題に大きな貢献をしてきた

 

 確かにそうですよね、ガソリンエンジン自体も

昔に比べれば驚くほど高性能になっていますし。

その他でも日本の省エネ技術、小型軽量化技術、蓄電池技術などは

間違いなく世界をリードしていますね。

 

②脱炭素社会の実現にはEV化だけではなく、生産工程やリサイクル工程で

 使用される電力も脱炭素化できなければ不可能

 

そうですよね、福島の事故以来ほとんどの原発が停止しました。

ソーラー発電や風力発電でも日本は完全に出遅れています。

ほぼ化石燃料に依存した電力供給になっています。

 

③このままでは国内の生産拠点の大部分は火力発電の少ないフランスに

 移すことになり、大幅な雇用の喪失、納税額の減少は避けられない

 

これまでも日本経済を支えてきた基幹産業が喪失って

信じがたい話に聞こえますが、極めてリアルな脅威です。

若者が仕事の少ない地方を出て都会へ集まるように、いづれ日本の将来に

見切りをつけて、フランスほか諸外国に加速度的に流出していくでしょう。

ただでさえ少子高齢化なのに。

これだけは何としても避けて頂かないと本当に「死活問題」ですね。

 

④もし全ての車両をEV化したら夏のピーク時には電力不足になる

 原発10基か火力発電20基の増設が必須

 

事故後まもなく、廃炉作業も難航している日本で原発の再建??

火力発電増設も、いづれもまったく現実味のない話ですよね。

 

日本の火力発電のエネルギー効率は世界トップレベルだそうですが、

その技術を開発が遅れている途上国へ提供したいと提案したら

世界中から猛バッシングを受けました。

「世界は脱炭素化を目指してるのに火力発電を促進してどうすんの!」と。

 

良かれと思ったことが、逆に日本人の感覚が世界から大きく

遅れていることを露呈してしまいました。

自然エネルギー利用をリードできてこそ技術先進国なのです。

時代はもう完全に進んでしまっているのです。

 

⑤軽自動車の電動化率は低いが、小型軽量で十分に低燃費だ

 日本は軽しか相互通行できない狭い道路が85%

 地方では不可欠なライフライン

 

このあたりから、豊田会長の感覚もすでに世界から遅れていることが

露呈してきます。

ヨーロッパにも狭い路地や農道はたくさんあり、小型車もたくさん

活躍しています。

しかし世界はそれらも全てEV化しなきゃダメって時代になってるのです。

充電設備が足りなければ、政府が主導してでも一気に普及させようと

言っているのです。

 

⑥HV、PHV、EV 、FCVというミックスの中で、日本の良さを

 維持・発展させながら進んでいくことが日本の生きる道

 

これは「遅れ」ではなく完全に間違っていますね。

そもそもEV化って日本の自動車産業を守るためにやることですか?

違いますよ! 地球全体の環境を守るために絶対に必要なんです。

海面上昇も異常気象も国境は関係ないですよ。

だから世界が足並みを揃えよう、一致団結しようと言っているのです。

 

こんな時に「日本の良さ」とか言ってたら

まさに「ガラパゴス」、「浦島太郎」ってやつです。

確かに日本はいろいろな分野で最先端をリードしてきた高い技術力があります。

でもそれにこだわり過ぎるあまり、世界標準がすっかり出来上がってから

ようやく着いて行くという失敗を何度も繰り返して来たじゃないですか!

豊田会長は昔と同じ道を歩もうとしていますが、

環境問題はすでに危機的状況、待ったなしなんです。

 

⑦現在もガソリンエンジン車を量産し続けているメーカーを

 まるで社会の敵のようにシンボル化しないで欲しい

 

このままでは間違いなく日本が「世界の敵」に認定されるでしょう。

CO2を低減できない国は高い「排出権」を買うことになりますし、

その分増税すればますます海外へ逃げ出す人が増えるでしょう。

原子力発電も問題が増える一方ですし、自然エネルギー利用を

推進していると言えるレベルでもありません。

 

あらためて豊田会長にお聞きしたいです。

こんな明らかに出遅れている日本政府に今後も期待を抱きながら、

自動車業界は政府と二人三脚で、極めて困難なCO2排出問題を

乗り越えて行けるのですか?

 

⑧ユーザー目線を忘れてはいけない

 高性能でも高くて買えない車では意味がない

 ユーザーが合理的で正しいと思った選択ができるのが健全な社会

 

それなら二人乗りで100万円以下の超小型EV車をどんどん作って

もらいたいです。

それがもっと普及すれば「選択の自由」と言えますが、現状は違います。

軽自動車にしてもハイブリッドにしても、業界全体がこれまでの

ガソリンエンジンをビジネスベースとして執着しているから

EV化への意識になかなか変わらないのです。

 

政府も、超小型EV車は自動車税も重量税も消費税も全て

無料にするくらいの本腰を入れるべきです。

採算が見込めない地方でも、政府主導で充電設備を増やすべきです。

 

豊田会長、これまで日本の自動車産業が日本経済を支えて来たことも、

低燃費で高性能な日本車が世界で認められていることも、業界全体で

様々な環境対策に貢献していることも良く解りました。

それらを理解したうえで、「政府が電力問題に取り組まないと無理」

とか「フランスに移転する」とかどうか言わないで下さい。

このまま業界と政府が依存し合っていたら共倒れになっちゃいますよ!

 

トヨタ自動車ほどの技術と経済力があれば、いっそうCO2排出ゼロの

発電所を開発できないでしょうか??

未来都市を造ってしまうくらいですから、電力が本当に足りなくなったら

どうなってしまうか良くご存じですよね?

もうすでに研究を進めているだろうと私は期待していますが。

今回の豊田会長の提言は、遅々として行動できない政府への警鐘ですよね?

 

以前は技術大国と言われた日本ですが、本当の実力、総合力が

試されようとしています。

最近では、ビルなどのコンクリートに一定の割合で炭素を混ぜ込んで

固定化してしまう(大気中のCO2を少しでも減らす)という技術も

実用化されつつあるようです。

 

泣いても笑ってももうすぐ結論が出ます。

これが日本の「最後の挑戦」にならないことを祈るばかりです。